2024-12-14 空の手

自分がリーダーシップをとることは苦手だが、楽しいことを好きな人たちと共有したいという気持ちで以前は行動していた気がする。場所を作ったり、踊っているのだってそれが原動力のひとつではあった。自分が心動かされることに誘って、もしその人もそのひととしての景色をそこに見てくれたらいいな。主体はあくまでも「そのひと」であるのでそこに生まれることは千差万別で、だからなかなかそれが何なのかを名指して説明することもできない。曖昧でわかってもらいづらいことかもしれないけれど、それでよかった。それがよかった。

嬉しくなるようなことがらや体験を手渡したり、体験をしたひとに話を聞いたりするのが多分好きなんだと思う。話じゃなくとも驚きの顔や目の輝きを見られるだけでもいい。または、数年後にそのひとがどんなふうに変わるかを見られるだけでも。

そんなふうだった。

でも今はすっかり人を信じなくなってしまったな。人を信じなくなって、自分のことも開いてゆかなくなった。変な完璧主義もあいまって誰かをなにかに誘ったり、自分も誘われたりすることもしなくなった。がっかりすることを予想して行動自体をしなくなった。一応の完成形のようなものをどこかに示すような原動力も持てないまま。

たぶん、後年いまの自分を振り返ったら、あのときのわたしはまだ少しずつ取り戻している最中だったんだと思ったりするんだろうか。それともこのまま、ほんのり塞いだまま、せいぜいここらへんが自分のできることだったんだと納得させながら穏やかに過ごすんだろうか。

けれどこういうことを書くということは、やっぱり私はなにかまだ手渡したいと思っているのかもしれない。そのやり方が変わってゆくとしたらそれはどういう風になのかを、素直に聞こう。

もうあんなふうに燃え尽きないやりかたを覚えたはずだから。

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でも、表現したい先はいつでも世界なのに、その世界を信じることができなくなってしまったら誰に向かって話しかけたらいいんだろう。口を開いてもふたたびただとじてしまうのは、どうしてもそこに嘘をつけないからだ。